『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』 マイケル・ドハティ監督   ☆☆☆★

6月15日に映画館で観てきたハリウッド・ゴジラの感想を書いておきたい。ちなみに、監督のマイケル・ドハティは前作『ゴジラ』の監督とは別人。しかし筋金入りのゴジラ・ファンらしく、それは本作のあちこちからも見て取ることができる。いうなればこの映画はハリウッドが日本のゴジラ映画に捧げたオマージュであり、ファンからの熱烈なラブコールである。だから見どころも、そういうマニア心理の露呈部分がメインとなる、というかほとんどそこだけだ。

はっきり言ってストーリーは凡庸。主人公一家の家族愛をメインに据えた展開も、モスラやキングギドラが目覚めるなりゆきも、描写も、ところどころに挟まれるテロリストと軍隊の銃撃戦アクションも、すべてが常套の域を出ない。だから見ていて退屈だった。

もう本作の良さは怪獣及び怪獣の戦い、そのビジュアルに尽きる。そこでどれだけカッコいい、シビれる怪獣のビジュアルを見せられるか。これ以外にない。そして、その部分に関してはさすがハリウッド、日本製ゴジラではどうしても力及ばなかったところを強引な力技でクリアしている。ゴジラ・ファンにとってはそれだけでも感涙ものだ。逆に、ゴジラに思い入れがない人がこの映画を観て感動できるかは微妙だ。

だからこそ、モスラやキングギドラの目覚めシーンをもうちょっとどうにかして欲しかった。両方ともパターンが一緒だし、前作のムトー出現シーンとも大して変わり映えしない。未知の生命体の萌芽(卵だったり氷塊だったり)が目の前にあり、科学者たちがそれを研究し、何かのきっかけで振動が始まって「まずい!」とパニくる。フォーマット通りだ。これだったら、インファント島の岩の上で孵化するモスラの方がよっぽどいい。

更にがっくり来たのは、幼虫モスラの造形。目は吊り上がってるし、「グルルルル…」なんて唸るし。怪獣だから恐くしようということなんだろうが、その発想が常套であり、子供っぽいのだ。だからアメリカ製モンスターはどれもこれも無個性でつまらない。

モスラは昆虫だ。だからあの感情が分からない小さな目がいいのだ。そして成虫モスラは、あの巨大な丸い複眼がいいのだ。それをなんだか子供だましの吊り上がった目つきにしてしまう。せっかくの美しいモスラの造形を、アメリカン・モンスター化してしまっている。あれはいただけない。

監督の談話によれば、モスラは今回リアルな蛾の造形に近づけたらしい。確かに成虫モスラはそんな感じだが、リアルな蛾らしさなんてこの映画にいるだろうか。それより私は、巨大な複眼と巨大な羽を持った美しいモスラを見たかった。それにリアルな蛾なんて言いながら、成虫モスラ初登場シーンでは光ってばかりでどんな外観か分からない。ファンタジーっぽくごまかしている。あれもまた子供だましだ。ちゃんとモスラの姿を見せてくれ。それから、「美しい」なんて登場人物にセリフで言わせちゃダメだ。

逆に、そんなモスラとは対照的に、見事だったのはキングギドラである。さっき書いたように他と似ている目覚めシーンはいただけないが、キングギドラの造形は本作中最大の見どころだ。といっても、オリジナル・デザインから何も変わっていない。キングギドラの造形は、あの日本版ゴジラのデザインに完全に忠実である。それが大成功の理由だ。

オリジナルのデザインのまま飛翔し、雷電を吐き、暴風雨をまとって出現するというイカした設定を加え、圧倒的なビジュアルでゴジラと激突する強大無比なキングギドラ。これだよ。ぼくたちはずっとこれが見たかったんだ。

ゴジラとキングギドラ対決のガチンコぶりは、確実に日本のゴジラ映画を超えている。『三大怪獣 地球最大の決戦』の締まりのない結末はもちろんのこと、その後人間の乗り物になったりヤマト聖獣になったりと迷走を繰り返したキングギドラが、ようやく本来の威厳を取り戻した。そして宿敵ゴジラとの壮絶なバトルを見せてくれた。映画としては結局駄作かも知れないが、この一点に関しては本作を強く支持したい。

四大怪獣の中では一番地味な存在ながら、ラドンもなかなか良かった。これも造形はオリジナルに忠実だが、火口から出現したということで体のあちこちが赤く発光している。特に、ぐるぐる旋回飛行して戦闘機を破壊する技がかっこよかった。

主役のゴジラは前作と同じ造形だが、放射能火炎は前回より太く力強くなっていた。が、やっぱり首太過ぎである。まあそんなわけで、怪獣のビジュアルこそが命であるこの映画、良かった順にいうとキングギドラ、ラドン、ゴジラ、モスラである。モスラはあれほどビジュアルに工夫のし甲斐がある造形なのに、こんな結果になってしまって残念だ。

最初にオマージュと書いたが、細かいところで過去のゴジラ映画への目配せがあり、ゴジラ・ファンの心理をくすぐってくる。小美人は出てこないけれどもモスラに絡む女性科学者が双子だったり、モスラが燃え上がるシーンがどう考えても金子版『大怪獣総攻撃』のパクリ、じゃなくてリスペクトだったり。

そしてオマージュの最たるものはあの伊福部さんのゴジラのテーマだ。あれがここぞというところで流れた時は、やっぱり思わず知らず感動した。これがオマージュ映画であることを堂々と宣言した瞬間である。

それにしても、ゴジラ史における三つの人気怪獣を瞬く間に消費してしまった本作、この後はどうなるのだろう。次はキングコングとゴジラが戦うらしいが、それで終わりだろうか。それともメカゴジラが出て来るのだろうか。いっそガメラを出したらどうだ。なんて無責任な夢が膨らんでいきます。

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