『ザ・プロフェッサー』 ロバート・ベイリー   ☆☆☆☆

週末一日で一気読み読了。法廷スリラーにして、とことん痛快な王道エンタメである。何も考えずにハラハラドキドキし、ページを繰る手が止まらず、最後はスッキリ爽快、という心持ちを最大限に味わいたい人向け。

ということはまあ、色々とステレオタイプではある。池井戸潤と一緒だ。善玉チームは前半苦戦し、なかなか光明が見えない。悪玉連中は絵に描いたように卑劣で、悪辣。加えて善玉チーム内に恋愛模様あり、誤解から来る仲たがいあり、和解あり。そういうお約束がイヤだ、という人は本書を手に取るべきではない。これは王道エンタメであって、職人的に作られた高性能なプロダクトと思って読むぐらいでちょうどいい。

しかし一旦そう思って読めば、これはかなり高性能なプロダクトである。中でも特筆すべきは盛り上げ方のうまさ。主人公はもう60代の大学教授トムだが、彼が冒頭ハマりこむ苦境のツラさ、幻滅の激しさ、絶体絶命感はよくできている。トムの心理描写もリアルだ。もう再起はできないと諦め、あとは若者に任せて隠棲状態に陥ってしまうのだが、本当にこんなことになったら誰でもそうするだろうなと思える。人間、そうそう能天気には頑張れないものだ。

トムから事件を託される若い弁護士の方も、色々とツラい。お先真っ暗の状況だ。それでも歯を食いしばり、一縷の望みにすがって頑張るが、そう簡単に事態は好転しない。好転するどころか、こりゃもういよいよダメですわ、となる。そしてついに、溜めに溜めたものが炸裂する後半戦へとなだれ込むのだが、この盛り上がりはヤバイです。この時が来るのは最初から分かっているんだが、ついにトムが腰を上げる瞬間はアドレナリン噴出。

そこから後は、法廷ものとして鉄板の盛り上がりを見せる。絶対絶命、という地点から主人公チームがどう挽回していくのか、その法廷テクニックの数々は見ものだ。もはやページを繰る手は止まらない。手堅く書かれた法廷ものというのは間違いなく面白いが、本書も例外ではない。とにかく、法廷テクニックを知り尽くしたトムの戦いぶりがエキサイティングだ。敵側も優秀なので、火花を散らすような法廷バトルを堪能できる。

色々と盛りだくさんな設定もにぎやかで悪くない。特に、善玉チームでトムを支えるポーの存在がいい。かつてトムの教えを受けた黒人弁護士で、弱気になったトムを叱咤激励し、ここぞというところで的確にサポートする。その他盛り込まれた人間ドラマも、あざとさは感じるけれどもやっぱりうまい。

あえて言えば、被告側が証人の殺人にまで手を染めるのはちょっとやり過ぎじゃないかと思ったが、まあ良しとしよう。王道エンタメなので文句を付けようと思えば色々あるだろうが、週末の楽しい夜を約束してくれる一冊であることは間違いない。

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